再録シリーズ:河鍋暁斎

もろもろ整理する中で出てきた文章。2014年9月の再録。

─────────

河鍋暁斎(かわなべきゅうさい)」って、知ってる?

大丈夫。僕も知りません。名前くらいは記憶にあるが、どんな絵を描いたのか、てんで思い当たらない。そんな僕が、わざわざ、蕨にある「河鍋暁斎記念館」という彼の美術館に行ってきた。ことの顛末はこうである。

 夢野久作の「ドグラマグラ」の中で、確か主人公の前世だったと思うが、美女の死後。死体が腐り果て、朽ちてゆく様を写生する男がでてきたかと思う。当時は、「まぁ、おどろおどろしいことを、夢野久作は考えるものだな」程度に思っていた。しかし、この絵が本当に存在することを、恥ずかしながら、つい最近知った。

 どうも「九相図(くそうず)」と呼ばれる仏教画とのことだ。これがなぜ仏教でモチーフにされたかというと、「こんな美女でもこんなになる」ということを描くことで、無常観を悟らせるためのものだったらしい。

 そういうわけで、「実際、この絵を見てみたい!」と思い、調べてみたら、大抵、京都のお寺に収蔵されている。唯一、関東で見られそうなのが、この「河鍋暁斎」の描いた「九相図(くそうず)」だったのである。バイクで30分くらいだったから、案外近かった。行ってみると、こじんまりで自宅を改装したすごく素敵な美術館だった。

 残念ながら、「九相図(くそうず)」は見られなかった。しかし、どうもこの「河鍋暁斎(かわなべきゅうさい)」さん。親御さんを含め、なかなかクセのある人だったようだ。

 小さな頃から、写生が趣味だった彼。ある日、川から男の生首が流れてきた。創作意欲の沸いた彼は、写生するためにその生首を持ち帰り、押入れに隠していたらしい。あえなく親に見つかり叱られるが、理由を正直に説明すると、親は納得した、、、だって。

 それにしても素敵な美術館。お暇の折にはぜひとも足を運んでほしい。

ちなみに絵葉書はあった。「九相図(くそうず)」自体は来年(2015年)、三井だか三菱だかの美術館で公開されるとのことだ。

http://kyosai-museum.jp/

2024年12月18日

  • line

戻る